季節の食材を生かしたケータリングやInstagramでも人気の料理家 大塩あゆ美さんの「あゆみ食堂」。昨年に続き、デイト ワークショップスタジオに再び登場です。今回はあゆ美さんが旅した韓国でのおいしかったものをあゆみ食堂流にアレンジしたメニューをいただきます。題して、「韓国の旅の味 タッカンマリ風鍋と美味しいワンプレートごはんの会」。メインとなるタッカンマリとは韓国版鶏の水炊きのこと。寒い季節にぴったりのメニューに期待が高まります。
ざっくばらんでおおらかな韓国料理
早速あゆ美さん、「韓国、行ったことありますか?」と参加者たちに質問。あゆ美さんは旅の道中、たくさんのおいしいものに出会ったそう。「韓国は人も料理もすごくざっくばらんなんです。おおらかというか。そこが自分に合っている気がします。」あゆ美さんいわく、韓国の料理は「肩ひじ張らず、カンタンにつくれるのに、すごくおいしい」。カンタンでおいしいのならなにより嬉しいけれど、でもここで、ふと疑問。タッカンマリって、鶏を一羽分まるまる煮込む料理なのでは…?
作りやすい材料で、ちゃんとおいしい
そんな心配にこたえるように、「今日はモモ肉と手羽先を使います。本当は本場みたいにまるまる一羽を使うのがおいしいのだけど、日常だとなかなか手に入れづらいから。でも、骨から出汁が出るので、手羽先か手羽元は必ず入れてくださいね。」と、あゆ美さん。他にも現地ではスープに入れる朝鮮人参などの漢方食材も日本では手に入れにくいので省略。かわりに出汁と香りの要素としてゴボウを入れます。前日から昆布を浸しておいた水に、鶏、ゴボウ、長ネギ、生姜、ニンニクを入れてあとは弱火で1時間ほど煮るだけ。本当にカンタンです!
究極にシンプルな味付け&意外な食べ方で
ここで注目すべきは味付け。なんと塩のみ、なんです。「あとで詳しく説明しますけど、このタッカンマリ、食べかたがすごく変わっていて。韓国通の友人に食べてもらった時も、こんなの初めてって言われて。たぶんわたしが韓国で食べたお店の独自の食べかたなんだと思う。でも、これがすごくおいしくて!」と、あゆ美さん。なんでも、生のキャベツ、生のニラ、お好みで酢醤油、からし、ジャンと一緒に食べるんだそう。キャベツ?生のニラ…?一体どんな味になるのでしょう。好奇心がムクムクと沸いてきます。
韓国風なら白い炊き込みごはん
続いて、「雑穀入り炊き込みごはん」。炊き込みごはんというと醤油風味の茶色いごはんをイメージしますが、今日はあゆ美さんが韓国で食べた炊き込みご飯にならい、酒と塩のみで味付け。黒豆、さつまいも、蕎麦の実、赤米を白米と一緒に炊きます。炊飯器の場合と鍋の場合、それぞれの分量や豆の戻し方などを参加者の料理事情を確認しながら、丁寧に教えてくれるあゆ美さん。その心配りに人柄が滲みます。炊飯器にスイッチをいれたら、次は「韓国風緑豆のおやき」(チヂミ)の生地づくりを。生地のベースとなるのは小麦ではなく、緑豆と米粉。体にもうれしいグルテンフリーのおやきです。
お弁当にもぴったりな韓国おやき
まず、水でもどした緑豆をフードプロセッサーで攪拌し、米粉と合わせます。具材は焼く直前に混ぜ合わせるのがポイント。「水が出てしまわないように。でも、おおらかな韓国ではあんまり気にしてなかったみたいだけど(笑)」と、あゆ美さん。参加者からの「どんな具材がおすすめですか?」との質問には、「豚肉を入れると冷めてもおいしいのでお弁当にもおすすめ」だそう。そして、おやきにつけるのはざく切りしたたまねぎを酢醤油に漬けただけの薬味も兼ねたシンプルなタレ。おやきにかけたらどんな味になるのか、こちらも楽しみです。
おなじみの調理法をアップデート
続いてはナムル。あゆみ食堂の定番レシピです。ワンプレートに並んだ時の彩りを考え、大根、人参、ほうれん草の3種を作ります。野菜の茹で方や、茹でた後の水気の絞り方などのおなじみの工程も、あゆ美さんが教えてくれるポイントを抑えると食感がぐっと引き立てられたり、色味や旨味を逃さずに仕上げることができます。「ちゃんと研いだ包丁で料理をすれば、それ自体が調味料みたいなもの」とあゆ美さんが力説するほどの、包丁研ぎの奥深い世界にも話がおよび、参加者たちのメモする手は止まりません。
細部に息づくあゆみ食堂のセンス
ナムルはお口直しの料理でもあるので、味付けは控えめで。最初の塩もみでちょうどいい塩梅を決めるのがポイント。それぞれのナムルの味を変えて、お互いが引き立てあうように。そんな料理の構成を考える視点も勉強になります。ゴマは指でランダムにつぶしながら入れることで、口に入れたときに香りの強弱のリズムが生まれるように。何気ない工程のひとつひとつの積み重ねがおいしさを導く。プロセスの細部にまで、あゆみ食堂ならではの感性が息づきます。
焼き目と味見に盛り上がる
そろそろ仕上げモードに。まずは、おやきを焼きます。具材を混ぜ合わせ、たっぷりの油を使って揚げ焼きに。具材をしっかり感じられるように厚めに焼いていきます。ひっくり返すといい焼き目。一気に広がる香ばしい香りとともに、参加者から思わず歓声があがります。同時進行でタッカンマリにじゃがいもを投入。じゃがいもはスープに溶けないよう、火を止める10分前に入れます。最後まで鍋が煮えたぎらないように弱火で。これが、できるだけ肉に旨味を留めながらスープもおいしくするための最大のポイントです。そしてここでお待ちかねの味見タイム。みんなでスープをいただきます。その滋味深い味わいに思わず、ホッ。「今日は炊き込みごはんがあるからしないけど、このスープを吸わせたうどんで〆めるのがホントに最高なんです!」と、あゆ美さん。そうでしょうとも!!想像するだけでおなかが鳴りそうです。
キャベツとニラでいただくタッカンマリ
ついにすべての料理が完成。あゆ美さんを囲みながら、みんなでいただきます。ここで、あらためてタッカンマリの食べかたについて説明が。千切りキャベツとニラを取り分け皿に入れ、その上に鍋からすくった具材を乗せます。このときスープはなるべく入れないこと。スープは後で楽しみます。皿の縁に自家製ジャンをつけて、これを溶きながら、お好みで酢醤油、からし(水で溶いてサラサラにしたもの)をかけて。ジャンの作り方もカンタン。材料をフードプロセッサーにかけるだけ。ポイントは辛みがマイルドな韓国唐辛子を使うことと1週間以上寝かすこと。寝かせることで味がなじみ、発酵がすすむことで旨味が増すそう。ためしに作りたてのジャンと寝かせたジャンの食べ比べをしてみたら、同じものとは思えないほどの違いが。もちろん今日は寝かせたほうのジャンでいただきます。
おかわりが止まらない
一見、斬新な食べ方も口に運べば納得。薬味のキャベツとニラがどんどん減っていきます。野菜がたくさん食べられて、つくづくヘルシーな一品です。スープも塩だけの味付けとは思えない奥深い味わい。そこに薬味とタレが実にいい仕事を。もちろん、おかわり続出です。あゆ美さんはこのタッカンマリでよく鍋パーティをするそう。「最近すごくリクエストされるんです。もうすでに“5タッカンマリ”くらい予約があって(笑)。すごくヘルシーだし、みんな、食べた次の日がすごく調子いいって言ってくれるんですよ。」
「おいしい」がひしめき合うワンプレート
おやき、ごはん、ナムルは彩りよくワンプレートに盛り付けました。おやきは焼きたてで表面がパリッパリ。食べごたえがあるのに重くないので、パクパクいけちゃいます。ビールにもぴったり。炊き込みごはんはタッカンマリのスープとの相性が抜群。合間についつい食べたくなる3種のナムルは食感と香りのバリエーションが楽しく、3種のローテーションで何度も箸を運んでしまいます。
超元気になれる!あゆみ食堂
「あゆみ食堂さんのInstagramを見ていて、ぜひ本物を食べたいと思って来たんです。」「前回参加できなかったので、念願が叶いました。」あゆみ食堂ファンの参加者たちとあゆ美さんとの尽きないおしゃべりもおいしさを彩ります。あゆ美さんからは韓国旅行で出会ったおいしいものの話(まだまだあった!)や、もっと買ってくればよかったと後悔しているお土産の話、いつか行ってみたい旅先や、今後のワクワクするような計画についても。おいしいものを食べることと食べてもらうことへの惜しみない愛情とパワーあふれるあゆみ食堂にたくさんの元気をもらったのでした。あゆ美さん、ありがとうございました!
Profile
大塩 あゆ美 | 料理家
出張料理「あゆみ食堂」 として季節ごとの旬の食材を使ったケータリングを提供。楽しい食卓を作りたいと日々奮闘中。著書に「あゆみ食堂のお弁当 23人の手紙からうまれたレシピ」(文化出版局)、「超元気になれる! あゆみ食堂のワンプレート」(家の光協会)http://ayumi-shokudo.tumblr.com/
Instagram:@ayumishokudo
あゆ美さんへのインタビュー:「季節のごはんに祈りを込めて」
※デイトワークショップスタジオは、2023年2月28日(火)を以て営業を終了いたしました。
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